大体、こういうことをするのには、勢いってものが必要なんだよ。うん。









キスだってシたいし、いわゆるまあ、ええと、ソウイウ事だってちゃんとシたい。
そう、だって、俺たち恋人になったわけなんだから。
そりゃ、男同士で恋人とか、自然の理に反してるし、非生産的なことだってわかってるけど。
なにもシちゃいけねーってことはねぇだろう。
大体その"わかってる"ってやつも"頭で理解してる"ってだけで、感情はついてってないし。
つまりは、いわゆる、男子としては健全ってことだ。



けど、でも、だからって、すぐにできるわけではなく。



そう、要は、勢いと、きっかけだ。
三橋の家には、何回かいった。
三橋の家の三橋の部屋に、俺と三橋が二人っきり。
めちゃくちゃ緊張して、でもその緊張を気取られたくなくて、1回目は「そういやお前の投球さ」って感じで話題を野球にもってった。
2回目の訪問のときはあいつの部屋に炬燵が出現してて、ケータイでやり取りなんかして。
あ、こいつ、やっぱりケータイ打つの早ェ、とか変な感慨を持った。
3回目も野球の話で4回目は純粋に勉強を見てやった。ていうか、三橋が珍しく「阿部くん、オレ、の、勉強見て」なんて誘ってきたから。まあ、なんていうか、今考えるとそれは三橋なりの口実だったんだろうな、と思うんだけど、その日は結局三橋の勉強を見るに終始してしまった。そのとき気がついたけど、三橋のノート、アレちょっとびっくりした。何でかって。


ノートが、黒板丸写しだったからだ。


見開きの2ページまるまる使って、黒板を端から端まで丸写し。授業中寝ないのは知ってたけれど、ノートのとり方とかなんでこんなンなんだコイツ。天才なのかアホなのか、どっちだよまったく。
そんなんだから黒板めっちゃ使う教科と、まったく使わない教科で成績の落差が激しいんだよ。
いや、まあ、コイツの場合落差っつっても、そんなに激しくないんだけど。下のほうだから。
まあそんなこんなで、5回目も引き続き勉強を見てやって。

6回目の訪問の、今日。

さすがに、恋人ってものになってから1ヶ月以上も何にも無いって言うのは、どうなのよって思った訳だ、うん。










思っただけで、アクションを起こせない俺がいる訳だけどな。軽く泣きたい。チクショウ。









大体、キスするときってなんていえばいいワケ?
いや、そりゃ「三橋、キスしてもいい?」とか言えばいいんだろうけど。
それじゃいったい、どんな顔して言えばいいんだよ。
ていうか、恥ずかしすぎるだろ「キスしてもいい?」とか。
無理だろ。絶対無理だろ。恥ずかしすぎるだろ。
でもだかといって、急にキスしたら三橋絶対びっくりしてキョドって、終いにはワケワカラン理由で泣きかねない。
キスして泣かれるとか、そんなの嫌だ。
想像しただけで俺のほうが泣いちゃいそうだ。

だからまず、前置きが必要なんだよ。

でもその前置きが思いつかない。あーもークソなんかイライラしてきたかも。

「・・・阿部、くん」
「あ?」

あ、ヤバイ。
今イライラが声に出てた絶対。
ごめんな三橋、別に怒ってるわけじゃねーんだ。
そう謝ろうとおもって顔を上げたら、予想外の近さに濃い蜂蜜色の瞳があった。
瞬間ギョッとする。

「な、」
「阿部くんて、目、真っ黒だ、ね」

知ってたけど、マジマジとみたら、なんかオレとあんまり違うから、びっくりした、カモ。なんて。
三橋が「フヒッ」って笑う。
照れくさそうに、嬉しそうに、笑うから。





あ、ヤバイ。






「三橋あのさ」
「え、」











 

キスしても、いい?

もうなんでもいいよ、しちゃってください(笑)
はじめてーのーちゅう!は阿部くんからです。このころはまだ阿部くんが優勢。
でも乙女なんだぜ・・・。
こういうスキンシップに対していつまでも初心なもんだから阿部くんはだんだん押されぎみになっちゃんだよ。