阿部くんと、キスをした。
少しだけカサついた唇で、オレがお茶請けと一緒に出したポカリの味。
どこかで誰かが、キスの味はレモンの味とか言ってた気がするけど、ポカリだった。
あ、でも甘酸っぱいって意味ではある意味あってる?
いや、でも、ポカリだし、なぁ。
そうかそれならきっと、阿部くんもオレがさっきまで食べてたクッキーの味がしたのかな、とか。
じゃあもしかして、焼肉とかを食べた後は焼肉の味がするのかなぁ、なんて変なことを考えてみたりして。
ああ、だから口臭が云々でブレスのケアがどうのこうのとか、よくテレビでやってるのかなぁ、なんて思ってみたりして。
考えるのはさっきから全部阿部くんのことばっかり、だ。
頭の中が全部阿部くんで埋ってく。
ちょっと恥ずかしくて、胸の奥のほうがほんのりと温かい。
ああ、これ、幸せって気持ちなんだろう、な。
野球をやってる時とはまた違う、ほんのりと揺れる暖かな。
ああ、そうだ、これは、あれだ。
阿部くんの真っ黒な瞳の中にゆらゆらと揺れていた、あの小さくてあったかな光だ。
アレが、オレの、胸の奥のほうにあるんだ。
ソレってなんだか、とっても不思議で、とっても嬉しい。
阿部くんのあの暖かなオレを思ってくれている気持ちが、いっつもオレの中にあるみたいだ。
阿部くん。
阿部くん、オレは君を好きになれて、よかった。
君がオレを好きになってくれて、よかった。
じゃなかったら、オレはきっとたぶん、こんな温かい気持ちをずっとずっと知らないままだった。
キスがあんなに恥ずかしくて、嬉しくて、温かいものなんて、知らないままだったに違いないんだ。
だから、ね、阿部くん。
明日になったら、朝になったら、君にあったら、真っ先に言うよ。