指先が、冷たい。
緊張している。
緊張しているはずなのに、体中が熱くて、熱くて。
「三橋」
こっち、向けよ。
俺を見ろよ。
冷たい指先を、柔らかい頬に寄せて、上から三橋を覗き込む。
薄く開けた口から零れる息が荒い。
涙を乗せた濃い蜂蜜色の瞳が、胡乱な陰を含んでいて。
こういうの、なんて、言うんだっけ。
キレイとはまた違う。どこかエロいのに、そんな軽い言葉じゃ言い表せない。
匂い立つような、男にしてはやけに白い首筋に、唇を寄せた。
―――なんて、夢を、みてしまった。
起きた瞬間に、ものすごい自己嫌悪で、頭を抱えた。
何を、何を見てるんだ、俺は。そりゃ、シたいけど。シたいけど、ああああ。
ていうか、どういう経路でああなったんだよ、そこンとこはっきりしてくれよ夢!!
そりゃ三橋と恋人になってこの前やっとキスまでして、しかも次の日あったら三橋から「キスしてくれる?」なんて聞いてきたもんだから思わず涙ちょちょぎれたんだけど。
ああ、三橋もシたかったんだー、なんて思って、泣きそうだったんだけど。
でもさ、あの夢はない。俺的にないわ。
なんつーか、三橋にシツレイっつーか、夢に見るまで三橋とシたいのに、言い出せない俺が情けないっつーか。
いや、だって、もし。
もし、三橋がシたくなかったら、どうする。
そもそも、俺は勝手に三橋がその、なんていうか、下っていうのか、ええと、ヤられる方?女役ってやつ?
まあそっちだ、って思ってンだけど、なんとなく。
でもよく考えて見ると、それもなんか、俺の一人ヨガリっつーか。
男同士だし、スルのってやっぱすっげー特殊で大変で、ヤられる方はすっげ相当負担かかンだって、この前ネットで調べて知った。
あ、そうか、そんなこと調べたからあんな夢見たんだろうか。
いやていうか、調べてる時点で俺すでにアウト?ああああ。
「タカー、何やってんのー?」
起きてるんでしょー?朝練間に合わなくなるわよー。
「・・・」
ああ、そーだ、朝練だよ、野球だよ。
支度しねーと、あと10分で。
三橋はもうきてっかな。あいついっつも早く来てるよな、そういえば。
やっぱあいつ、野球大好きなんだよなぁ。
その負担って、野球に響く、ンかな。
どーだろ。
でも、うまくすればそれほどでも無い、とか、書いてあったような。
けど、でも、俺もアイツも初めてで、うまいうまくないのへったくれも無い、ような。
って、俺!!いいからそっちから頭切り替えろー!!!
「タカー?」
「・・・ウーッス」
ああ、ヤベェ。
切り替えろ切り替えろ。
なんかまだ、夢の中の三橋がちらつくンですけど。
切り替えろ切り替えろ切り替えろ。
濃い蜂蜜色の瞳が、胡乱気な光を揺らして、みたこともない表情で。
切り替えろ切り替えろ切り替えろ切り替えろ。
もし、あんな顔で、ほんとに三橋が、俺を見たら、俺は・・・――。
じゃ、ない!!切り替えろっつってんだろ俺ぇえーーーー!!!!