阿部くんをみると、ドキドキする。
ドキドキして、カッカして、もっともっと欲しくなって。
止まらなく、なる。
不意に伏せた瞳を縁取る睫毛が、意外に長かったりしたのに気がついたのは、キスをしてから。
少しだけ視線を上げれば見える阿部くんの顔。
キスしてる間に、少しだけ薄目を開けて、超至近距離で見たその顔。
下ろした瞼。
キスの角度をどちらともなく変えるときにピクリと動く、形のいい眉。
オレの頬に優しく添えられた、暖かい手。
グラウンドの土っぽい匂いと、ほんの少しだけするオレンジの匂いは多分きっとシャンプーで。
オレの好きな匂いのする、阿部くん。
もっと、欲しい、な。
阿部くんを、感じたいな。
オレを阿部くんで、染めて欲しい、な。
ごめんね、オレ、やっぱり我侭で、欲張りだから。
今日もまた多分、キスをねだって君を困らすことになる。
けど、でも、阿部くんの困った顔が。
赤く染まる顔が。
ふらふらと泳ぐタレがちの真っ黒なその瞳が。
阿部くんも、オレとシたいんだって、思ってるの、知ってるよ。
知ってるけど、いわない。
オレは我侭で、欲張りだから。
オレが気がついてるってこと、阿部くんには教えてあげない。
おしえちゃったら阿部くんは、きっと、だって、恥ずかしがって、オレにキスしてくれなくなる。
阿部くんは純情だから。
けど、だからきっと、オレがこんな気持ちを抱えてるなんて。
阿部くんに抱かれたいと思ってるなんて、思いもしないんだろうな。
ごめんね、阿部くん。
オレは阿部くんが思ってるほど、キレイなイキモノじゃないんだ。
でも、けど、だけど。
阿部くんが、オレに、そうあってほしいと思うなら、オレは、知らんぷり、できるから。
だから、まってる、阿部くん。
阿部くんの心の準備ができるまで、まってる。そういう我慢は得意、だから。
でも、けど、だけど、早く。
早く早く早く。
早くしないと、オレが、襲っちゃう、カモ、よ?