どうしよう、勃たないんですケド。
ローションだって用意して(三橋が「オリーブオイルでもいいのに」なんてつぶやいていた。その知識はいったいどこから手に入れたのかと問いただしたいが、我慢した)ゴムだって用意して(正確には、用意してあった、だ。だからいったいその知識はどこで手に入れたんだと小一時間問いただしたい。マジで)ベッドの上にお互い座って。
なんとなく見詰め合って、笑う。
その笑いがちょっと緊張気味で、お互いにひくついたりして。
けど、でも、それでもやっぱりシたいのは、お互い様で。
どちらともなく、唇を重ねた。
けど、問題はここからだった。
「・・・」
「・・・」
気まずい。
ものすっげー気まずい。
チラリと三橋を伺い見た。
あ、どうしよう、コイツ、泣きそうだ。
うわ、ヤバイ、コイツ絶対「やっぱり阿部くん、男のオレなんかとスルの、嫌なのかも」なんて思ってる。
ぜってーそうだ。うわ、クソ、マジいい加減にしろよ俺。
緊張しすぎて勃たないとか、どんだけだよ!!
「阿部、くん、えっと」
「あ、いや、えっとな」
三橋がふらりと立ち上がろうとするのを、俺は必死で手ぇ伸ばして、引き止めた。
うわ、必死でって何だよ。俺カッコワリ・・・。くっそ、俺のが泣きてぇよ三橋。
シたいんだよ、俺、お前を抱きたいんだよ。
でも、なんか、すっげー緊張してんだ。
気分的にはあの美丞ン時と同じぐらいに、テンパって、緊張して、もうワケわかんなくなりそうだ。
「・・・阿部くん、手、冷たい」
その声にハッとして、いつの間にかうつむいていた顔を上げた。
じっとこちらを覗き込んでくる、濃い蜂蜜色の瞳。
三橋の目が、俺の真意を探ろうと、俺の瞳をじっと覗き込んでいる。
「キンチョウ、なの、か」
「・・・だよ」
全力で否定したかった。
否定したかったけど、でも、だって、実際緊張しちゃって勃たないし。
でもソレってすっげぇ情けなくね?
そう思って、ギュッと瞼を下ろした。
くそ、泣くな、俺、泣くな。
情けなさすぎだろ、泣くなよ。こんなことで泣くんじゃねーよ。
三橋の前で、泣くんじゃねえ、俺!!
「阿部くん」
ふわりと鼻腔をくすぐる甘いシャンプーの香りと、頬を掠める少し湿った髪の感触。
背中に回された三橋の両腕。
左肩を包み込む、タコだらけの右手。
三橋が、俺に、抱きついて、いる。
びっくりして反射的におろしていた瞼を上げて、視線だけで三橋を追った。
けど、視界に映るのは跳ね返った茶色の毛先と、ほんの少しだけ赤く染まった耳の先っぽだけ。
それと、左側の肩が、暖かい何かで、濡れる感触。
泣いてる、のか。
「ごめ、オレ、ちょっと、ウレシ、く、なって」
「な、んで」
「阿部くん、キンチョウして、くれるの、だって」
オレが、大事だから、でしょ?
耳元でつぶやかれた声が、熱い。
ああ、もう。
ああもう、コイツ、なんなの。なんなのコイツ。
俺をキュン死させる気なのか、コイツは。
思わずぎゅうっと抱き返して、ぐっと肩を持って、密着してた体に隙間を作って。
三橋の後頭部を左手で持って、右手を顎にあてて、もう大分慣れてるキスをした。
一瞬で離して、けど、顔はそのまま、近いままで、顎に当てた右手を頬にあてて、コンって額をくっつける。
ああ、睫毛がぶつかって、少しくすぐったい。
「っふは」
「ウヒッ」
お互いに赤い、耳まで赤い顔で、笑った。