阿部くんがこっちを見てくれない。
スコアブックと何かしらのデータに嫉妬なんていうのも、おかしいことなんだけど。










阿部くんの横にずりずり腹ばいに近づいて、胡坐の上に横から顎を乗せる。
上のほうから「おーい、なにやってんだー」なんて、抗議にすら聞こえない笑い混じりの声が聞こえた。
けど、ノートをぺらぺらめくる音とシャーペンを動かす音は止まらない。

むう。

両手をついて、もう少しだけ阿部くんに乗り上げる。
胡坐の中心に顎を落としこんで、下から阿部くんを見上げた。
一瞬だけ笑いを含んだ真っ黒な目と、視線が絡む。
大きくて筋張った左手が、まるであやすみたいに、オレの頭をなでた。

ああ、気持ちいい。

気持ちいいけど。
チラリともう一度、阿部くんを見上げる。
右手は相変わらず何事か書き綴って、止まる様子はない。
むう。阿部くん、どうしたら、こっち向いてくれる、カナ。




別に邪魔したいわけじゃ、ないんだよ。
けど、でも、だって。
もっともっと、阿部くんを感じたくて。
オレは、欲張りだから。
もう、阿部くんと"一緒の空間にいる"ってだけじゃ、満足だけど、どこか半分なんだ。

どこか、足りなくなっちゃう。




じっと阿部くんの顔を見上げてたら、首疲れちゃった。
それで顔をちょうどいい位置に戻して、ふと、胡坐の中心に目がいった。

あ、今、阿部くんのイジったら、どうなるだろ。

阿部くんはいま部屋着のジャージだから、その上から触っても、多分感じるはず。
あ、でも手使うのこの体制じゃきつい、カナ。
えーと、うーんと。・・・あ、口でもいける?
唾液つけないように気をつけて、唇で挟み込む感じにすれば・・・むお、いけるかも!

「・・・おい、三橋」
「んふぇー?」
「お前、なにやってんの・・・」

なにって、それは。









「暇、だから、口で、阿部くんの、はむはむ、してみて、る?」


瞬間、阿部くんの顔がボンッて赤くなった。
あ、漫画みたいな赤くなり方、はじめて見たかも。



 



かまってまって


もう何も言うまい。