合わせる唇の味なんて、もう気にしなくなった。
違う、な。
気になんてできないほど、何回も何回もしたから、もう味なんてどうでもよくなった。
絡める舌の、ヌルリとした感触も、もう大分慣れて、慣れすぎて。
もうキスのときに舌が入ってないと、物足りないカンジ。
外気に晒されて一気に冷めた唾液の熱が、絡めて絡めとられてる間に復活して、もっともっと熱くなる。
熱くなったまま阿部くんの歯をなぞって、阿部くんになぞり返されて。
「は・・・ふ、」
上あごの裏を舐められると、声が洩れるのはいつものこと。
けど、どうにもソコだけは慣れなくて、阿部くんの舌で責められると体が反応して、カッカして、もう止まらなくなる。
多分、それが、阿部くんなりのサイン。
そのサインに対するオレの投球は、ズボンの上から阿部くんのソレをなぞる、いうなればストレート。
超至近距離の薄く閉じられた真っ黒い、夜より黒い瞳に、淡くて暖かな光が燈る。
ああ、キレイ、キレイ。
阿部くんの瞳は、今日もきれい、だ。
阿部くんの暖かい手がオレの昂ぶりに触れて、軽く口付ける。
「・・・・っ」
声は、上げない。
息をつめて、嬌声を殺す。
息をつめて嬌声を殺しながら、オレのソレを含む阿部くんをじっと見つめ続ける。
口内の熱が、口内の肉壁が、縦横無尽にオレを貪り尽くす舌が。
阿部くんの、オレを含むその表情が、オレの支配欲を満たしてくれるから。
だから、声を上げない。
声なんか出したら、現実に引き戻されてしまう。
だからオレは息をつめて、嬌声を殺して、阿部くんをただじっと見つめ続ける。
ああ、でも、そろそろ。
そろそろ、欲しい、な。
タコだらけでゴツゴツしてるオレの右手を、阿部くんの真っ黒な髪に差し入れて、くしゃりと握った。
気がついた阿部くんがちょっとだけこっちに視線をくれて、オレの昂ぶりから口を離す。
外気に晒されて、少し寒くて、けど、でも、それ以上に体は、阿部くんを求めてて。
上体を折り曲げて、阿部くんの耳元に、顔も持っていく。
「あべ、くん・・・いれ、て?」
真横にある阿部くんの顔が、ふ、と笑った気がした。