目覚ましがなる前に起きると、なんだかスッキリした気分になれる。
だからっつーワケじゃないけど、俺は二度寝しないほうだ。
逆に三橋はそりゃあ寝汚い。
俺が起きて、起き上がって、その気配で一瞬起きるのに。
起きたんなら、まあ覚醒させてやろうって俺の親切をよそに
「三橋ー起きてんだろ、起きよーぜー」
「にゅぅむぅううーにゃぁあー」
これである。
いってること意味ワカンネーし。
ていうか「にゃぁあー」ってなんだよ、いつの間に猫になったんだよお前は。
三橋が猫、なんて考えたら自然と口の端がつりあがって、軽く噴出した。
けど、三橋の起きる気配はまだない。
やれやれ、なんて息をはいた。
まあとりあえずは支度しねーとだしな、とおもってベッドから片足を下ろしたそのとたん。
俺の腰に三橋の両腕が回って、俺をホールド。
おいおい。
「三橋、寝ぼけてんのか、起きてんのか、どっちだよ」
「うーにゃーうー」
いやいやだから、なんだよソレ。
お前いつからニャウリンガルが必要になっちゃったの。
しかたねぇなあ、なんてまたちょっと笑って、少しだけ振り返って背中にくっ付いてる三橋の頭に右手を置いた。
寝癖なんだかいつものピョンピョンなんだかわかんねー具合の、柔らかくて色素の薄い茶色の髪が、俺の指に絡む。
「起きろ、三橋。飯食おう?」
「んー・・・くうー」
「・・・やっぱ、起きてンじゃねーか」
前に向き直って呆れ半分、なんかシラネーけどほんわりと温かくなった気分半分で、軽く息を吐いた。
背後で、三橋が静かに笑う気配と俺の背中伝いに起き上がる気配。
ま、こんな朝も偶にゃ悪かねーな、なんて。
「あべくん」
「ん?」
振り向いたら、結構な至近距離に、ちょっと眠そうな、けれど薄く微笑んだ、三橋の顔。
ああ、うん、なるほど。
そういうことか。
判りずれぇの前に、頼むから日本語でねだってくれよ。まったく。
またちょっと笑って、結構な至近距離を、超至近距離にして。
「おはよ、三橋」
軽く触れた唇に、三橋が笑って。