人にプレゼントをするときって、なんだかすっごいドキドキする。
喜んでくれるかな、とか。
笑ってくれるかな、とか。
ありがとうって言ってくれるかな、とか。
とにかくドキドキして、選んでるときは思わず笑っちゃう。
店員さんに「包んでください」って言うときとか、店員さんに「プレゼント用ですか?」って聞かれるときとか。
とにかく嬉しくて、なんだか気恥ずかしくて、顔が自然とほころんで。
「はい」
って答えたら、何でか店員さんが真っ赤になってた。
プレゼントを渡す当日は、当然荷物が一つ多くて。
その一つだけいつもより多い紙袋を見るたびにオレが笑うから、田島くんに「お前今日機嫌いいな!」なんてニッって笑われた。
うん、機嫌いいよ、オレ。
だって、今日は特別なんだ。
本当に特別で大事な日なんだ。
吐く息はまだ白くないけれど、ほんの少しだけ肌寒い時期。
高く遠い空。
黄色く赤く色づいた街路樹。
その隙間から降り注ぐ太陽の光。
頬を掠める風。
通り行く雲。
全部全部、キラキラして見える。
阿部くんの真っ黒な瞳の中に燈った暖かくて小さな、星みたいな光が、そこら中にあふれかえってるみたいだ。
通り行く雲を追って視線を落としたら、タオルを首にかけた阿部くんの後ろ頭が見えた。
「あ、べ、くんっ!」
思わずダッて駆け出したら、振り返った阿部くんが目を一瞬だけ丸くした後で「こら三橋!無闇やたらと走ンなっつってんだろ!」なんていつもみたいに怒鳴る。
うん、でも、怖くないんだ。
阿部くんがオレに対して声を荒げるのは、オレを大事にしてくれてるからだって、判ってるから。
それでも怒鳴られたのは事実だから俺は「ご、めん、ナサイ」なんて眉尻をちょっとだけ下げた。
「ンで、どうした」
「あっあの、ね!」
オレは持っていた紙袋を、阿部くんの前にずずいと出して「これ」とつぶやいた。
ああ、ドキドキする。
やっぱりプレゼントするのはすっごいドキドキだ。
阿部くんは、喜んでくれるかな。
阿部くんは、笑ってくれるかな。
阿部くんは、ありがとうって言ってくれるかな。
「今日、その、あの、ね。きょ、う。今日は」
ああ、ドキドキして、キンチョウして、喉がカラカラだ。
舌が張り付いて、脳が焼け付いて、もともと口下手な方なのに、うまくしゃべれない。
ちょっと泣きそうになって阿部くんを見たら、阿部くんが真っ赤になってた。
あ。
阿部くん、もしかして、覚えてたんだ。
そっか、覚えてて、くれたんだ。
今日だって。
1年前の、今日だって。
「うん、そうだ、今日だな」
なんて、声だけは落ち着いてる阿部くんが、オレの手の中から紙袋を受け取った。
オレが嬉しくて「ウヒ」って笑ったら、嗅ぎなれないふんわりとした匂いが鼻を掠めて。
え、と思って顔を上げたら、ホントに耳まで真っ赤になった阿部くんと目が合った。
真っ黒な瞳に、小さくて暖かな光が、キラキラしてる。
「・・・やる」
なにを、と聞こうとして、匂いの元に目がいって。あ、タオル。
さっきまで阿部くんが首に下げてたタオル、だ。
嗅ぎなれない、真新しい匂い。
さっきまで畳んであったかのようについてる、キツイ折り目。
きっと、新品のタオルで、けど、でも、阿部くんって純情で乙女で、さらには恥ずかしがり屋さんだから。
包んでもらうのはなんだか気恥ずかしくて、出来なかったんだ、きっと。
そうおもったらなんだから笑えてきて、もう一度「ウヒッ」と笑って、真正面にいる阿部くんの目をじっと見つめた。
阿部くんの真っ黒で暖かな光の燈る瞳の中に、オレが映ってる。
ああ、阿部くんもオレの目を見つめてるんだ。
そう思った瞬間に、思考が吹き飛んだ。
喜んでくれるかな、とか。
笑ってくれるかな、とか。
ありがとうって言ってくれるかな、とか。
もう、いいや。
オレの思考が吹き飛んで、きっと、阿部くんも、思考が吹き飛んで。
どちらともなく、唇を重ねた。