「三橋」

まぶたの上に、唇を落とす。

「三橋」

赤くなった目じりの上に、唇を落とす。

「ずっと」

ささやく言葉は漣で、耳をやさしく掠めていって。

「ずっと」

けれど、それは、甘い毒。

「一緒にいたい」







だめだよ、阿部くん。
"ずっと"なんて、できっこないんだ。
どんなにしたくてもそれは、できない事なんだよ。







「無理、だよ」

ずっとなんて表現は、とっても曖昧だ。

「阿部くん、それは」

そもそも"永遠"という定義が、不確かだ。
だからね。

「それはね、無理、なんだ、よ」

 

 

 














三橋の言葉はいつも現実的だ。
現実的で、素直で、直球で、酷く残酷だ。

俺の腕の中で俺を濃い蜂蜜色の双眸が、じっと見つめている。
見るなよ。そんな目で、みるなよ。


「阿部くん」

タコだらけの右手が、俺の頬に触れる。
なんだよ、暖けぇ手、しやがって。
これじゃあ、俺が泣いてるの、目立ってしかたねぇだろ。

「阿部くん」

三橋の左腕が伸びてきて、俺の後頭部をかき抱いた。
なんだよ、やさしくすんな、ばか。
これじゃ俺が、わがままいったみてーじゃんか。
わがままいって、叶えてもらえなくて、ぐずってるみてーじゃんか。








「好きだよ、阿部くん」








優しい言葉が、俺の後頭部に降り注ぐ。

「好きだよ」

ばか。
ばか、ばかやろう。三橋のばかやろう。
反則だ。こんなんじゃ俺、反論もできやしねーだろ、ばか。
泣くのは三橋、お前の専売特許じゃねーのかよ、ばか。
俺にとられてんじゃねーよ、ばか。

「阿部くん、好きだよ」








「・・・知ってるよ、ばーか」







涙はなんか、シラネーうちに、とまっちまった。

 

 

 




















「阿部くん、これ、あげる」

オレの手のひらにちょこんと乗った銀色の、ちょっと変わったデザインのそれを、阿部くんはキョトンとした顔で見つめた。
その顔に「え、なに、え、今日ってなんか記念日だったっけ?」とかいてあるものだから、ちょっとだけ噴出しちゃった。

「・・・ンだよ」
「なんでも、ない、よ」

笑ってから、銀色の変わったデザインのソレ、ネックレスのトップにもなるストラップを、阿部くんの手の平にのせる。乗せてからオレのケータイをズボンの尻ポケットからズルリと取り出した。

「おそろい、なんだよ」

阿部くんにあげたデザインの片割れは、オレのケータイのストラップになってキラキラとゆれている。

「ペア、ね。そーいや、こーゆーのって揃えたことねーな」

恋人になってから、と阿部くんがちょっとテレながらいった。
耳の先っちょがポッと赤くなるの、なんか可愛いなぁ、なんて。
でも言ったらきっと、阿部くんは眉間にしわ寄せちゃうだろうから、いわないんだ。

「あ?なんか文字彫ってあンのか」
「ん、合わせると、こーなる」

Tout le temps par le côté

「・・・と、とう、つ、れ・・・、読めん」

ムスっとした阿部くんの顔に、オレはまたちょっと笑った。
読めなくて、いーんだよ。だってわざわざ読めないように、フランス語にしたんだから。

 

 





 


Tout le temps par le côté―――ずっと、傍に、いるよ。




ロマンチスト

*

リアリスト

このSSがたぶん、ウチのアベミハの真骨頂です。
ロマンチストで乙女な阿部くん×男前でリアリストな三橋くん。
まあ、なんだかんだ言っても三橋くんだってロマンチストなんですけどねーアレー?
というか、阿部に「三橋のばか」って言わせたかっただけです。
なんかひらがなで「ばか」ってかわいくね?かわいいよね?みたいな。