ふと、思い出した。
なんで思い出したのかはわからないけれど、そういえば今日は、7月7日だったと、突如に思い出した。
しかも珍しく、夜の天気は快晴。
オレはなんとなく嬉しくなって「ムッフフ〜ン」といつもの鼻歌を歌った。
「お、なんだ三橋ご機嫌だな」
「う、お」
振り返ったら阿部くんが「よう」と片手を挙げていて、オレは思わずへにゃりと笑った。
「阿部くん、だっ」
「おー、なんだどうした」
マジで機嫌いいなお前、テンション高ぇー。なんて、阿部くんが笑う。
だって、阿部くん、今日は七夕なんだよ。
しかもすっごい久しぶりに雨じゃないんだよ。
織姫と彦星が見えるんだよ。
―――あ!
「阿部くん!」
「ん?」
「今日、部活の後、残れる?」
「は?」
阿部くんは真っ黒な瞳をちょっと見開いてから、ちょっとだけ小首をかしげた。
あ、なにそれ、ちょっとカワイイかもしれない。いやいや、じゃ、なくて。
説明しないと、だ、オレ。
「星、見ようよ、一緒に!」
「星? あ、七夕かー」
「うん!だから、ね!星!」
西浦の周りは畑ばっかりで、街灯もポツポツとしかないから、場所によってはものすごくキレイに見えると思うんだ。だから、部活の帰りに、みたいんだけど。
・・・だめ、かな?
ちょっと困って見上げたら、阿部くんはなんでか視線をふよふよと泳がせて、真っ黒な髪の毛をガシガシと後ろ手に混ぜ返した。
「あー、もー。見るよ。一緒に見たいんだろ。だからそんな泣きそうになンなよ」
「な、泣きそうじゃ、ない!」
「はいはい」
そういいながら、阿部くんは呆れ顔でオレの頭をわしわしと混ぜ返した。
阿部くんの手、大きくて、ちょっと筋張ってて、オレ、好きだ。
「あーでも、部活ン後だろ? 体冷えてもまずいし、星見ながら遠回りで帰るとかにしねぇ?」
「う、お!それ!いい!それがいい!」
パッて笑ったら阿部くんがニッって笑い返してくれて「ンじゃ、決まりな!」と、もう一回オレの頭をわしわしした。
オレはすごくすごく嬉しくなって、思いっきり笑って、大きく頷いた。
やった。
やった、やった!すっごい嬉しい!すっごく嬉しい!
スゴイ日だ!今日はすっごくイイ日だ!
夜は快晴で、織姫と彦星が見れて、しかも、阿部くんと一緒に、2人で遠回り!
あ、なんか、これって。
うん、そうだ、これって。
「阿部くん、阿部くん」
「ん?」
「今夜は星空デートだ、ね!」
阿部くんの顔が次の瞬間、耳の先まで真っ赤になった。