「あ、ゴム無い」
まあ、消耗品だから仕方ないんだけど。
けど、でも、そうか。参ったなぁ。
もうすぐ阿部くんが来ちゃう。
別にオレは着けてもらわなくてもいいけど、後処理するのが大変なのは、わかりきってることだ。
シた後、反動でオレはしばらく動けなくなっちゃうから、後処理は全部阿部くんにまかせっきりになる。たぶん。
それはさすがに、なるべく避けたい。
けど、でも、もういつもの薬局はしまってる時間だし。
コンビニは・・・うーん、品揃えが微妙だった気がするし、高いんだよね、無駄に。
―――ピンポーン
あ、来ちゃった。どうしよう。
「で、お前、買うの、それ」
阿部くんの顔に「ええ、マジでここで買う気なの?ホントに?本気と書いてマジで?」なんてわかりやすく書いてあるから、思わずそれを左手に持ったまま噴出しちゃった。
瞬間に軽くウメボシ。阿部くん酷い。
オレの右手にはスーパーの黄色いかごが握られてて、そのかごの中には適当に入れたお菓子と2Lのペットボトルが3本。結構持ってるのキツい。
別にお菓子も飲み物も家にあるんだけど「アレだけ買うとか!!そんなのやめてくれ!!」って阿部くんにせっつかれた。せめてもの隠蔽工作だと本人はいう。
いや、全然隠蔽できてないと思うんだけど、な・・・。
ていうか、そんなに買うの恥ずかしいなら、家で待っててくれてもよかったんだけど。
って、言ったら。
「お前だけにそんなはずかしことさせられるか!!」
なんて無駄に男気を出した。
オレは、阿部くんが時々わからない。
まあ、それで。
オレの右手にはそんな理由で入れられた、可愛そうなエキストラお菓子たち入り黄色いスーパーのかご。
そいで、オレの左手には例のもの。
一応愛用のうちに入るのだろうか。0.02mmの薄さが評判の、六個いり1200円のそれ。
いわゆるゴム。
「本気で買うのか?ここで、買うのか?」
「買わないと、できない、よ?」
「・・・そーだけど、さぁ」
阿部くんの真っ黒な目がふらふらと泳ぐ。
このコーナーにいるのがいたたまれない、って感じの顔してる。
なんでかなあ、いまさらだと思うんだけどなぁ。
やっぱり阿部くんは、時々純情ボーイだよね、なんて胸のうちだけでつぶやいて、オレは1200円の、本日一番高い商品を、可愛そうなエキストラお菓子たち入りスーパーの黄色いかごの中にポイッと入れた。
ちなみにその後阿部くんは、レジ会計のときにものすごい居た堪れなくなったのか、一人無心にレジ横の自動販売機を睨み付けていた。
そんな阿部くんをなんかちょっと、かわいいなぁ、なんて思ってしまうオレは、もうきっと大分末期、なんだろう、なぁ。
思わずもう一度噴出したら、ギッと凄まれた。
阿部くん、そんな凄まれても、理由が理由だけに怖くない、よ。