―――…おう、なんだお前、またそんな修行して。僧侶なんじゃねーの。

―――…っは、はるっ…アンタにゃ関係、ないでしょ!

―――…ちょ、その言い方酷くね?










僧侶に向いてない、とか。
暴力的、だとか。
信仰心が薄い、だとか。

ちげーよ、そうじゃねぇ。

そんなの俺にとっちゃどうでもいいんだよ。
俺は、だって、アイツのそばにいたくて、アイツの役に立ちたくて。
でも、アイツは生粋の僧侶だったから。
だから、だから…だから。

 

 


















咆哮には振り返らない。
黒く、とぐろを巻く狂気の色あいが空気を覆っている。
飢えた苦しみ。この果実豊富な永遠の秋の森で飢えに苦しむモノ。



人喰いの魔物、だ。




「寄って集って、喰らいつくそーってか」

上等じゃねーの。
俺はニッと口の端を上げた。
まぁ、すぐに襲い掛かってこないところを見ると、理性はぶっとんじゃいねぇらしい。
てことは、最近になって何回か人、喰ってんな。
その分向こうの体力は十分ってトコか。

よし。

俺は目の前で今にも気を失うんじゃないだろうかってぐらい真っ白な顔で固まってる三橋の腰をガッとつかんで(その瞬間に「ぐえっ」なんて蛙の潰れたような声が聞こえたが、あえてスルー)俵もちに担ぎ上げた。

「あ、あべっあべくっ!?」
「オイ、黙ってろよ」

じゃねーと、舌噛むし。
ギッとにらんだら三橋は「うぐっ」なんて声を出して押し黙った。
うん、協力的で何よりだ。
その間も魔物は様子を伺っているのか、ジリジリと動いている気配はあるものの、飛び掛ってはこない。
悪ぃな人喰い魔物。こんなチャンス逃がすほど、余裕なんざねぇんだよ。
俺は魔物に背を向けたまま三橋を担いでいないほうの手を口元に持っていき、中指と人差し指を唇に当てた。

「"阿部隆也は守神グリディアに請う。我の祈りを聞き届け、我に神の加護を…――【オートヒール】発動"」

詠唱終了と同時に俺と俺に担がれてる三橋の体が青白い光に包まれた。
気休めではあるけれど、コレである程度の傷なら自動修復できる。
そしてその時点で、俺はやっと人喰い魔物の方を振り返った。

黒く長い毛に覆われた、四足の動物。
瞳は鈍いオレンジ色に怪しく光っている。



その姿を認め、軽く舌打ち。

「…人喰い狼"レキル"の亜種、か」

通常単独で行動する魔物とは違い、集団で行動するタイプの珍しい魔物だ。
つまりは。










「ちょっと、厄介…だな」

輝く石の仄かな光