「"金炎琥珀"だとよ」

ヒソヒソと囁かれるのは、毒の言の葉。















鍛冶師の成人は15歳が原則で、成人した鍛冶師は"初代鍛冶師"の血を色濃く受け継いだ【創家】の長老より、鍛冶師名を授かる。
それはその人物の本質を表し、創生しうる武器防具の態すらあらわしている、らしい。
らしいというのは、オレがそれを実感できていないから。

「金? ナマクラの間違いだろ。」
「ちげーよ、ハリボテだぜ。ハリボテ」
「創家の血筋ったって、半分じゃぁな」
「ま、ハリボテも色さえぬりゃ、金ぴかにもならぁ」
「ハハ、違いねぇ」




―――…知ってるよ。




判ってるよ、十分に、判ってる。

創家跡取りの従妹・ルリは"創玄黒曜"。
創家の"創"に黒い糸の意味を持つ"玄"を鍛冶師の名に持つ彼女は、細身の鞭やら鋼糸を作らせたら天下一品。
幼馴染で遊び相手だった叶修吾くんは"氷星群青"。
彼はとても小さな飛礫に氷の属性をまとわせるのが得意だ。それがきっと、氷の星なんだろう。
で、オレは、どんなものを作っていたのかといえば、金の炎とは名ばかりの…―――

 

 

 













「おい」

聞きなれない声にハッとして、瞼を開けた。その瞬間に、グラリとゆれる視界。
アレ、オレ、何してたんだっけ。
ていうかここ、どこだ。オレなんで地べたで寝てるの?
ていうか、さっきの声の主はいったい、ダレ。

「おい、起きたのか?」

ひどく耳に心地いい音程の声色に、視線を移動させた。
瞬間視界に入ったのは、黒。




黒い、夜闇色の髪はそばに焚かれた火に淡く輝き、黒漆の様な光沢のある瞳は飛び散る火の粉を移して、まるで夜空。



「…夜の、人」
「はぁ?」

オレのつぶやきに、夜を体現してるかのようなその人は、まるで珍獣か何かを見るような目つきになった。
けれど次の瞬間には眉間に人差し指をあてて、頭を振り、もう一度「大丈夫か」とこちらの様子を伺ってくる。
オレはその言葉になんだか体調を聴かれているのとはまた違うニュアンスを感じたが、あまりよくわからなかったのでとりあえずは頷くだけにとどめておいた。

「え、っと、あの、ここ、ドコで、えっと、あの、あなたは、そのどち」

どちらさま、と続けようとしたオレの口もとに、夜の人(名前がわからないので仮称)はズズイ、と人差し指を立てた。

「あー…聞きたいことがいっぱいあるのはわかるが、ちょっとストップ。訳判ってねーだろうから、説明するわ」
「あ、え、あ…ハイ」
「とりあえず自己紹介。俺は阿部隆也。お前は?」
「あ、えっと、み、みは…三橋、廉、デス」
「三橋、な。…お前昼間のことは?」

昼間…昼間のことって、なんだろう。



というかそもそも、オレ、もしかして、もしかしなくても、ここ数日間の記憶があんまり無いんですけれど。
門をぬけて、門を抜けたらいきなり森の中で、ちょっと間誤付きながらとにかく町に出ようとおもって、魔物やら野生動物に
追っかけられつつ野宿して…それで、えっと、なんだっけ。
ああ、そうだ、町には一応ついて…ついて、えっと、それで、それから?



「…おい」
「へぁ?」
「覚えてねぇんなら覚えてねぇで、さっさとそう言えぇええぇ!!!」

ああーーー!!イライラするーー!!なんて夜の人(仮称)改め阿部隆也くんは、オレの米神を両拳で目いっぱいはさみながら叫んだ。








て、いうか!!いたい!!いたい!!いたあああいいいいい!!!



輝く石の仄かな光